修学旅行に付き添いできていた父兄は、隣町、船引駅に生徒を残し、タクシーで常葉に向かった。

ぼくらは、先生の指示に従い、駅から歩いて20分、船引中学校体育館に向かう。

強風が吹き荒れ砂利道の道路から砂埃が舞い上がる。まともに目を開いていれない状況の中を歩いて船引中学校体育館に到着した。「この風では、火はあっという間に広がるだろうか…。どこが燃えたんだ?家は大丈夫だろうか?」「残してきたたった一人の妹は…?」

体育館につくと、婦人会の方々が炊き出しの夕食を準備しており、2個のおにぎりが全員に渡された。
食後間もなく陸上自衛隊郡山駐屯地の隊員が寝るための毛布を運んで来てくれた。

先生方は、定期的に常葉の火災現況を伝えてくれており、中町から上町にかけた道路の両側は全部の家が燃えていると言う…。
話を聞くと当然、自分の家も燃えているのであるが、ぼくは不思議なことに「我が家だけは大丈夫、残っている。妹も無事。」と過信しながら一夜を過ごした。